4月1日新年度がはじまった。グローバル・スタンダードを考慮し年度の秋はじまりをとなえる向きもあるが、農事や歳時、和歌俳句の季節感に長年親しんできた日本では新しい年度へのアップデートは春に迎えるのがしっくりとくる。「はる」には「春」「晴る」「発る」「張る」など様々なニュアンスがあるが、共通するのは生長感覚。命の力がいや栄える今、あらためて1日も早い現状の克服また平穏な日常の回復を願う。
自然と同じく我々の健康の恒常性もアップデートによって維持される。その現場は細胞。一見同じように見える体は絶え間なく新しい素材に入れ替わっている。代謝周期の早い腸は2日、皮膚は1ヶ月弱、堅牢で可塑性の低いと思われる骨ですら3年くらいで新しいものにアップデートされる。アップデートの良し悪しが健康と不調、若さと老いを左右すると言っても過言ではない。老化やガン化も細胞アップデートの不調や異常に他ならない。
正常なアップデートの積み重ねの先に健康、若さ、長寿がある、その一例として京都(四神相応の地)という街の生命力を挙げたい。794年の平安遷都から数えてすでに1200年余り。木々の緑に囲まれ、そこかしこにきれいな水が流れる街には、現在も人々の豊かな生活の営みがある。インカ帝国、アンコール・ワット、ボロブドゥールのように都市は廃れるべくほとんど宿命づけられているが、それに反し京都の生命力は今なおみずみずしい。街全体に行きわたる陰陽五行の調和と細胞である人と水、緑の新陳代謝の相乗効果が京都に比類ない生命力を与えているのではないだろうか。
人体の陰陽五行を調える太極拳、その絶大な効果を日々実感する。心身が静かに通じた状態で行えば、血液循環・エネルギー循環が高まり、うるおいが全身に流通する。自己組織化がますます高まるのに、消耗はせず、循環効率が上がるからすごい。この点、他の運動とは一線を画する太極拳独特の世界観がある。
陰陽五行の調和について少し詳しく言えば、
「前進・後退・左顧・右眄・中定」が外的五行。
「粘・黏・連・随・不頂丢」が内的五行。
内外の調和が相まって、自己の陰陽五行である火・水・木・金・土(心・腎・肝・肺・脾)がますます良き状態に調整される。
練習後に感じる心身の調和と生き生きとした細部アップデート感覚を皆さんにも是非味わっていただきたい。
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