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執筆者の写真呉式太極拳 順展会

第40回 ちはやぶる


12月6日火曜日

謡・仕舞の稽古を終え、

少し時間に余裕があったので、

ゆく秋を惜しんで小一時間新宿御苑を散策した。

寒いだけでなく風が強烈で、

木の葉が嵐のように舞う光景が何度も見受けられた。

銀杏の葉はほとんどが木々から離れ、

黄色い絨毯のように地面にたたずんでいる。

風が雲をはらい、

少し暗いが遠くとおくまで透きとおる青い空。

見上げると繊月がひかえめに光る。

そんな寒くも清冽な日に、

この時期には思いもよらないものに出会う。

桜。

出会ったのは季節外れのソメイヨシノではなく、

ヒマヤラザクラ。

調べると高地の森に生息し、

1月から2月の冬に花を咲かせる由。

予期せぬものに唐突に出会うのはうれしいものだが、

武道の稽古ではこういう体験がたまに起こる。

地道な練習を真面目にコツコツ行っていると、

短期間では見えない何かが少しずつたまっていき、

あるとき突然花開く。

たとえば感覚がより繊細、より密になったり

全体のつながりがよりよくなったり…。

突然の変化の現れ方は様々だが、

身体のメカニズムやシステムの変化が

はじめて体感される瞬間はなんであれうれしい。

ただ忘れてならないのは、

前ぶれもなく顕在的に変化があらわれるのは一瞬のようだが、

それが潜在的に準備されるには結構な時間を要するということ。

季節がゆっくりと進むように、

変化への準備もゆっくりとたまっていく。


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